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もう大丈夫!

人間同士が本当の信頼を築くことだって難しいのに、ある日突然やってきた保護犬と信頼関係を築くことなんてできるのだろうか。できるとしても、相当な時間を覚悟しなくてはならないだろう。……佐助がやってきた頃、そんな風に思っていた。

ましてや。お互いのコミュニケーションも容易ではない“ヒトとイヌ”。思うところを伝える手段も確かではない。

イヌは本来人に従う動物という思い込みを捨て去り、イヌの側の思いや考えを尊重し、従属的な同居ではなく互恵的な同居を目指す。そうして、平和で穏やかな共生を得ていく。……そんなことをKapparと話し合い、イヌの行動やコミュニケーションについて、ネットで調べたり、本を読んだりした。とりわけKapparは熱心で、“ヒト目線での決めつけ”をできるだけ排除し、“イヌにヒト都合の行動のみは求めず、お互いの妥協点を見出す”ことを心掛けていたようだった。

それは、“求め、許す。しかし、求め過ぎず、許し過ぎない。”という、自立した人間同士の付き合いでも肝要なスタンスなのだが、何しろ、相手は種の異なる動物。心の有様が正確にはわからない。わからないから、また学ぶ。あるいは、トレーナーの判断を仰ぐ。といったことを繰り返していた。

Photo

佐助が“うちの子”になって2か月が経とうとしていた頃、突然、相互理解が進行していることを確信できた瞬間があった。その直後に撮った写真が、上のショットである。

三人で散歩に出た夕方、ふとリードが手を離れた瞬間、佐助が逸走。瞬く間に走り去り、角を曲がって見えなくなった。Kapparが後を追いかけしばらく姿を探したが、見当たらない。

皮膚の下に埋め込んであるICチップを頼りに探すことはできるだろうが、交通事故に遭わないだろうか……。その場に佇んだまま、二人でしばし話し合った。

ところが5分以上が経った頃、突然、佐助が帰ってきた!角を曲がって現れ、Kapparの横にチョコンとお座りした!僕たちの驚き、安堵、喜びは大きかった。

そして、二人の心の奥底に「もう大丈夫!」という信念の種が埋め込まれた。まるで、恋愛の第二ステージへ進んだような気分だった。6年2ケ月前の年の瀬のことだった。

              by Kakky

“1969年。僕たちの宵山 ―昭和少年漂流記第二章―”の連載を始めています。現在⑭まで掲載中。

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