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リハビリの小さな奇跡

今朝、東京世田谷にはまた雪が積もった。が、予報で聞いていたほどではなかったので、「な~んじゃ、口ほどにもない奴じゃのう」と、窓を開け空に向かって笑ってやった。

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しかし、この天候、脳卒中の後遺症を抱える人には困りものだ。痛みや不自由に冬の空と同じように心の晴れない人たちに何か明るい話題は提供できないないものかと考えていたら、思い出した。……リハビリの現場で起きた小さな奇跡の話。

何度かPT,OTの療法士で仲良くなった人を招き、自宅で食事会をした。その3回目の時だったか、OTのH君から聞いた話である。

H君が担当することになった老婦人は、脳出血患者だった。リハビリに通ってはいたが、既に病後3年が経過。めざましい機能回復は望むべくもなく、現状維持に努めている日々だった。担当することになってしばらくが経ち、伏し目がちで寡黙な老婦人と、H君は話をしてみようと思った。

「おばあちゃん、こんなことができたらいいなあって思っていることは何?あったら聞かせてください」

メニュー通りのリハビリに疑問を抱いていたH君は、“本人が望み、意欲を持って取り組むことができることを手伝う”という方法に個人的にチャレンジしていた。そのための質問だった。

「孫を、一度でいいから両手で抱きしめてみたいわあ」

老婦人は、H君を見ながら、少し悲しそうに動かない右手をピクリとさせながら答えた。

「わかりました!じゃ、お孫さんが両手で抱きしめられるようになりましょう。頑張りましょうね」

H君は即答した。自信はなかったが、なんとかしてあげたいと思った。

それから、リハビリはすべて孫を抱くことに向けて集中して行われた。近づく、かがむ、しゃがむ、左手で抱く、右腕を伸ばし右手も添える……。一連の行動を、孫がそこにる想定で繰り返した。

そしてある日、近寄りしゃがんだ老婦人の両手がH君の背中に回ってきた。右手には触れただけですぐに離れたが、確かに老婦人は一瞬H君を両手で抱きしめていたのだった。

「わ!できた!できたじゃないですか?!」

H君が大声で言うと、老婦人は「できましたねえ」とつぶやいて晴れやかに微笑んだ。

次のリハビリの日。始める前に、老婦人からH君に報告があった。それは、「孫を抱きましたよ。両手で」というものだった。

本当にあった話である。したいこと、小さなことであっても自分には価値あること、そんなことから始め、希望を捨てないことがリハビリのコツなんだなあ、とH君の話に少し感動の涙をこぼしながら、思った夜だった。…お酒が進みました~~。

“Dont Make Me Over”by Dionnne Warwick

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