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命の営業……佐助の場合

以前住んでいた家の近くに、耳の欠けた野良猫がいた。身体は黒く顔もいかついのだが、何しろ声がかわいい。その声には、人の足を止め、微笑みを誘うほどの力があった。ある夜、近寄ってきた“耳かけ”(まんまのネーミング)の頭を撫でようとしていたら、通りかかった近所のおばさんが「ああ、この子ね。本当に営業が上手よねえ」と、にこりと笑って去った。“なるほど、営業か~~”と思った。

“天使の微笑み”とも言われるBabys Smileは、赤ん坊が生き延びていくために、生まれながらにして身に付けている「かわいいと思ってもらえる表情」であり、決して笑っているわけではない、という説もある。生き延びていくための「命の営業」ノウハウは、動物それぞれに似つかわしい“かわいさ”で、きちんとプログラミングされているものなのかもしれない。

今朝、Kapparは父母の通院付き添いに小田原へ、僕はリハビリへ、佐助は預かり所での半日預かりへ、となるので、一緒に家を出た。これはいい機会だと思い、杖とリードを一緒に持ち、佐助との散歩の練習をしてみた。最近の佐助は無理に引っ張ることもないので、なかなかいい感じで歩いていたのだが、突然、道路の反対側が気になったようで、引っ張るように動いた。なんとか踏みとどまり、何があったのか確認しておこうと向こう側を見てみると、制服姿で清掃作業中のおじさんだった。それを見て、あることに思い当たった。そして、Kapparとこんな話になった。

「制服の男の人が大好きだよね、佐助。とにかく甘えるよね、制服の男の人に会うと。今急に動いたのも、ほら、あの人が気になったからじゃない?」

「うん。きっと、そうだ!好きだねえ、制服の男の人」

「その理由だけど、保健所で目を付けてくれてボランティアさんに連絡してくれたおじさんも、制服着てたんじゃないかなあ。その人の優しさを覚えてるのかもよ」

「あ!そうかもしれない。きっと、そうだよ!」

佐助の「命の営業」は、とにかく甘えることだったのかもしれない。周りから次々と犬たちが消えていく中でもおとなしくしていたという佐助が、生きながらえていくために唯一したことが、甘えることだったのだろう。受け止めてくれた制服のおじさんの姿は、佐助の頭に刷り込まれ、“制服のおじさん、大好き~~”になっているに違いない。

佐助の心の歴史に触れたような気がした朝だった。

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保健所のおじさんが「いい子がいるんだけど、引き取れないかなあ」とボランティアさんに連絡してきた時の写真。この手の先には、制服が……きっと!

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ボランティアさんの家に引き取られた直後の佐助。当時、月齢5~6か月。

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1年半前、我が家にやってきた直後の佐助。不安そうな目をしている。

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そして、数日前の佐助。大人になったもんだ。優しい目になったもんだ。……よかった、よかった。

「お知らせ」

「リハビリと介護NET」のブログがスタート。現在は、「Kapparの“ゆる・はや・ごはん”」と「脳卒中とコミュニケーション」の不定期連載中です。

ご質問、ご要望等がありましたら、是非お寄せください。真摯に対応させていただきます。http://ashita-harerukana.cocolog-nifty.com/blog/

昭和少年漂流記、連載中!

 (4月11日更新済み。次回更新は、4月13日です!)

 60sFACTORYプロデューサーKakky(柿本)

 

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