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脳卒中それぞれ。リハビリそれぞれ。‥⑪

-初台リハビリテーション病院で出会った“リハビリの人たち”-

Sさんは印象的な人だった。食堂でいつの間にかできた“同テーブルの仲間”の一人。危うい歩様ながら、いつも人の手を借りずにゆっくりと、微笑みながらテーブルまでやってきていた。きちんと椅子を引き、席に着くと「おはようございます」「こんばんは」と穏やかな挨拶をされた。

僕より少し年下の彼は、隣室の住人。同室のFさんからの情報によると、父親から譲り受けた異常なほどの高血圧に、やがて自分も脳卒中で倒れることになるだろう、と覚悟していたという人だった。食堂では多くを語らなかったが、僕とFさんの他愛もない笑い話のやり取りを楽しそうに聞き、時には自分に向けられる矛先を軽くあしらったりしていた。

食事が終わると「お先に」と一礼して椅子を引き、引いた椅子をきちんとテーブルの下に押し入れてから、ゆるゆると病室へと帰っていた。足元が危ういのだが、断固として手を借りることなく行われる一連の作業を、僕はいつも箸を止めて見ていた。

そんなSさんが、僕に話しかけてきたのは、僕が杖を付いてテーブルまで初めて行った時だった。先に席についていたSさんは突然、「やっぱり!」と言って僕を見た。そして、「K(僕)さんはきっと僕を追い抜いて、先に歩けるようになるだろうと思ってたんですよ」と微笑んだ。祝福の言葉に聞こえなくもなかったが、Sさんの心根を想うと少し辛かった。申し訳ないような気がした。何かしてあげられることはないか、と思った。

退院した後の不都合の有無を確認するための“外泊”を終えた時、“外泊”が近いSさんに、一泊の経験談を話した。それは、“お返し”の“口頭レポート”だった。

“段差は、少し大きいくらいの方が段差と認識できるのでいいくらいです。中途半端なユニバーサル・デザインよりいいみたいですよ”“出っ張りは、危険なものじゃなくて、摑まることができる場所です。指先でつまむだけでも助けになりますよ”などと、お話した。

耳を傾けていたSさんは、最後に一言“不安がなくなりました。ありがとう!”と言ってくれた。なんだか、また祝福されたような気分だった。

                          ‥‥つづく

60sFACTORYプロデューサーKakky(柿本)

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