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地方発ビジネスの成功例①‥‥“鮎正”

僕は、島根県益田市の出身である。益田市は、清流高津川が日本海に注ぐ河口付近に位置する。沖合いに今は無人島なってしまった高島を望み、後には高津川流域に広がる田園と豊かな山林資源を有する中国山地が控える、自然と産物に恵まれた山陰の小都市である。

山陰とはいえ、雪は多くない。暮らしやすい町である。

約20年前、スクウェアが勝負をかけたゲームソフト「ファイナルファンタジー」の仕事に関わり、一息ついた夏のことだった。「おいしい鮎食べに行きましょう」と誘われた。

中学生の頃、高津川の天然鮎を獲ったり食べたりしていた僕は、鮎にはうるさい。1万円のコースだと聞いて逡巡した。すると、「益田の人がやっている店らしいですよ」という。しかも、ご馳走してもらえるとのこと。「予約が必要なんですよ」と聞いて、瞬く間に表情まで変わった。「是非!早く行きましょう」。

というわけで足を運んだのが、新橋駅から徒歩5分の“鮎正”である。

僕は、 “鮎の塩焼き” が大好物。メニューに見つけるとついつい頼んでしまう。天然の鮎を食べるために、秋川渓谷の“黒茶屋”という店まで、ミニ社員旅行を決行したことさえある。

それでもなかなか味わえなかった“本物の鮎の塩焼き”に、僕は久しぶりに遭遇した。田舎を出て以来、絶えて口にすることのなかった鮎料理の数々にも再会した。

お店のことが知りたくなった。スタッフの説明を聞いて納得した。

「店長のお父さんが田舎で割烹旅館をやってらして、息子さんのために、毎日獲れたての鮎を送ってこられるんで。だから、新鮮でおいしいんですよ」とのこと。お父さんが経営されている割烹旅館は?と聞くと、日原という所にあるらしい。

そうか!と思った。おいしいはずだ!と納得した。ビジネスとして、うまくいくはずだ!と理解できた。

熱意がある。知識がある。歴史がある。そして、それを伝承する人がいる。客におもねる必要のない背景があるのだ。

地方で長く愛されているものは、受け入れられる素質を持っている。多くの人に受容されるように手を加える必要などない。それは、魅力を薄めるだけだ。

同行した人たちに料理のつたない説明をしながら、僕はちょっぴり誇らしい気分だった。不安は、ただ一点。チェーン展開に踏み出さないか、ということだった。

素材もノウハウも拡大すればするほど、希少性や独自性を失っていく。東京は大都市だが、一店舗でいいのだ。日本全体でも、せいぜい数店舗。人も素材も本物であり続けようとすれば、それが限度というものだろう。

そして今、僕が当時抱いた不安は杞憂に終わっているようだ。“鮎正”は、今でもOne&Only。新橋で盛業中だ。夏には予約もままならないらしい。

60sFACTORYプロデューサーKakky(柿本)

60sFACTORY活動日記は、こちら。

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