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巨大流通の限界!?-お袋の言葉の記憶

約20年前、子宮ガンで入院したお袋を見舞うため、毎週末帰省していたことがある。

当時は、萩・石見空港開港の随分前。宇部空港まで飛び、そこでレンタカーを借りて島根県益田市の日赤病院までドライブする、というなかなかハードな行程だった。

土曜日の朝に発ち、病室に到着するのが夜9時頃だったと思う。そのままベッドサイドで朝を迎え、毎日病院にやってくる親父と言葉を交わし、「欲しいもの買ってきてあげるから、教えて?何がいい?」とお袋に尋ねて、買い物に行く。約二ヶ月、そんな繰り返しの週末だった。

日赤病院のすぐ近くには、地元資本のスーパーがあった。僕にとっては便利なのだが、まずお袋はそれが気に入らない。

「あそこで買うの?まあ、しょうがないねえ。魚屋さんもなくなったけえねえ。あるんじゃけど、遠いけえ‥」と、始まる。お袋の大好物は、白身魚のお刺身。中でも鯛、平目には目がない。「スーパーにはおいしい魚がないけえ‥」と、いつも不満顔だった。

お袋は、“魚のことは魚屋に聞け”“野菜のことは八百屋に聞け”‥‥。で育った田舎のお嬢さん。プロの目利きと言葉を交わすことのない買い物自体、以前から耐え難いことになっていた。

「何でもわざわざ東京に運んで、切り身にしてパックして、また運んでくるんじゃけえ、高いし、まずいわけじゃあねえ」と、僕に白身魚のお刺身を指定しながら、いつも顔をしかめていた。

「じゃ、行ってくるね。今日は鯛でいいんだね」と念を押すと、「近所で獲れたてが買えたのにねえ」とため息。買ってくると、「おいしそうなのがあった?」と、少し顔を輝かせるが、パックを覗き込んで「あ、こりゃ活きが悪いねえ」と、またため息。息子としては、ちょっとがっかりだが、いたし方のないことだった。

VANの倒産前に経費を精査した時もそうだったが、無駄な物流コストほど馬鹿らしいものはない。お袋の言うとおりなのだ。

大手流通の生鮮三品に関しては、セントラルバイイングによる経営の効率追求がかえって無駄な物流を増やしているのは疑うべくもない。

しかもその時間を要する作業の中で鮮度を落とさないようにするために、またコストを必要とする仕組みになっている。そして、その負担は、生産者と消費者が負うことになるのだ。実に、馬鹿馬鹿しい話ではある。

お袋の不満は、根本的な問題を指摘するものだったのだ‥‥。

僕が小学校2年生の春から母親になったお袋にとって、僕は「子供らしい子供」ではなかったらしく、「洋ちゃん、あんたが子供の頃、可愛いと思ったことは一度もなかったよ」と僕に耳打ちして、お気に召す白身魚のお刺身を口にすることなく、お袋は亡くなった。

しかし、通い始めて3度目か4度目の土曜の深夜。「洋ちゃん、大丈夫?大丈夫?」と大きな寝言で僕を起こしたお袋の気持ちは柔らかく、今でも僕の中に残っている。

60sFACTORYプロデューサーKakky(柿本)

60sFACTORY活動日記は、こちら。

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