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脳卒中のリハビリ、困る誤解!?

「もっと、真面目にリハビリしないと!」。そう言われたことがある。同種のことは、何度か言われたことがあるが、こんなにはっきりと言われたのは一度きりだ。悪意があってのことではない。むしろ、激励の言葉だったのだが‥‥。

VANのアメリカンフットボール・チーム“VANGUARDS”は、倒産直前までの数年間、日本国内では無敵だった。弱いチームとしか戦っていなかったのでは?と誤解している方もあるかもしれないが、そうではない。社会人チームのみならず、学生のチャンピオン・チームと戦っても負けることはなかった。理由は簡単だ。学生の有名選手がVANに集まってきていたからだ。しかも、練習時間や道具は優遇され、ヘッドコーチ、マネージャーのコンビもしっかりしていた。ラグビー同様、社会人になってから充実する要素のあるスポーツでもある。VANの企業キャンペーンの重要な要素の一つとして、広報・宣伝戦略の一つに組み込まれてもいた。しかも、競技人口が少なく、社会人、学生ともにチーム数がまだ多くはない。ときたら、弱くなるはずがないのである。

そんなVANGUARDSの主要メンバーだった人が、約25年ぶりに事務所を訪ねてきてくれた。「中・高年向けビジネス企画」に関する相談だった。概略をお話した後、ついつい僕の病気の話になった。おもしろおかしくお話したつもりだったが、彼の顔は次第に同情と憐れみに曇っていくようだった。まずは、ビジネス・コンセプトと戦略フレームを書くことをお約束し、早く切り上げようとした。彼の表情の変化が僕にも苦しくなってきたからだった。

「じゃ、よろしく!」。とても風合いのいいカシミヤのチェスターコートを無造作に羽織りながら、彼は事務所の玄関で激励の笑顔を僕に向けた。僕は、事務所内では杖を手放しているので、左足をやや引きずりながら見送りに出ていた。ついつい習慣で、左手首を右手で握っていた。その姿を見て、彼は玄関から一歩出て立ち止まり、振り返った。

「もっと、真面目にリハビリしないと!」。冒頭の台詞は、その時彼の口から吐かれたのだった。“きちんとやれば、元に戻るもの”。一流のスポーツマンで、大怪我から復帰した経験もある彼のリハビリに関する認識が、言わせたのだろう。僕が面倒くさがり屋であることを知っているから、ということもあるだろう。「頑張りま~す!」。ちょっとおどけた返事に、彼は苦笑を残して帰っていった。

司令塔が壊れてるんだけどなあ。クウォーターバックがちょっと残念な奴になってしまってるんだけどなあ。ま、いいか。‥‥。彼を見送った後、僕はそんな独り言を口にしながら、打ち合わせテーブルに戻った。初台リハビリテーション病院の若いセラピストに関する愚痴を患者同士で吐き出しあう時にも、同様の表現を使っていたのを思い出していた。

60sFACTORYプロデューサーKakky(柿本)

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コメント

Kakkyさん突然のコメントでごめんなさい。脳卒中になっていたのですね、大変でしたねでも甦っていて、少し安心しました。益田市の呪縛霊になって34年、Googleでぐるぐるしていたら60sFACTORYにヒット、懐かしくブログ読ませていただきました。
おかげで43年間のいくつかの謎が分かり少し霧が晴れたような気分です。どうかお体を大切に、素敵な仲間たちと共に益々のご活躍をお祈りします。

投稿: 益田の呪縛霊 | 2008年5月10日 (土) 23時28分

Kakkyさん、ご無沙汰しています。
いつも、気になって読ませて貰っています。

何か、悲しくなりますね、脳卒中のリハビリは時間がとても長くかかります。
真面目にリハビリって、どういう事?って思います。
本人が一番、早く良くなりたい、元に戻りたいと思っているのに!!
私も自分が、その立場になって初めて分かる事ばかりです。
健常者の時は脳卒中の事、良く分かっていませんでしたから、
分かって下さい、と思うのは、無理なのかな??
病院でも皆さん、必至ですよ。
あの、長嶋さんも真面目にやってらっしゃいます。
でも、何年もかかっています。
限りなく元に近くする、でも完全に元通りには、ならないんですよ。
骨折などの、リハビリと同じではないんです。
正しく『司令塔が壊れてるんだけどなあ』その通りだとおもいます。
Kapparさん筆頭に理解のある“お仲間”が、沢山いらっしゃるんですもの、
それって、すごーく、幸せ、ラッキーですね。


投稿: オキロン | 2008年5月11日 (日) 10時01分

益田の呪縛霊様

人間界では、どう名乗っていらっしゃったのでしょうか?せめて、ヒントでもいただけませんか?
僕のせいで、靄に包まれていたことがおありのようですが、意図せざることかもしれません。非礼があったのなら、お詫びをしなくてはなりませんが‥。
さらに澄み切った空にするためのご質問は、お受けします。僕宛のメールででもお知らせください。

僕が呪縛されてしまいそうです‥‥‥。

投稿: Kakky | 2008年5月12日 (月) 04時27分

オキロン様

お久しぶりです。お元気でお過ごしでしょうか?
時々、ブログは覗かせていただいております。

初台に入院中、膝のコントロールができず痛みに困っていた時(今でも、大差ありませんが‥‥)、セラピストの人でさえ、脳細胞の損傷がもたらす影響と対処法に関して、深い知識とノウハウをお持ちではないのだ、ということに気付かされました。
本当に、“経験者にしかわからない”ことが多いですね。しかも、損傷箇所、その大きさ、発見されるまでの時間等々によって、千差万別です。
そんなことがわかってきて、周りの友人たちに、「患者のプロ」になるんだと宣言し、そうなれるよう意識することにしました。それは、今でも変わってはいません。難しさを実感させられるばかりですが‥‥。
「患者のプロ」に関しては、僕の考えを近いうちにブログで書かせてもらいます。

雨と寒さは、本当に身体と行動を制限しますよね。「変温動物になっちまったい!」と友人たちには言っています。
気長にいきましょう!いくしかないですね。許される限り‥‥。

投稿: Kakky | 2008年5月12日 (月) 04時48分

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