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健康優良児!!

Kakkyの昭和おもしろ事件簿ー③

昭和35年。小学校6年生を迎える春。僕は、それから四年間を過ごすことになる、島根県益田市横田町に引っ越した。島根県浜田市に生まれて以来、五回目の引越しだった。

引越し慣れした三人家族の荷物は、少ない。長屋のような作りの借家の押入れに布団袋と柳行李を放り込み、箪笥、水屋(茶箪笥)、鏡台、机の配置を三時間程度で決めると、僕はもうお役御免になった。早速往来へと飛び出した。滅多にない引越しを遠巻きに見ていた小さな子どもたちが、危険な動物に遭遇したかのように、一瞬身を寄せ合い、またゆっくり広がっていった。右手の、堤防へと続く坂道が曲がって向かっているのはどこだろう、としばし思案した後、左に首を転じると、町の体を成している家並みが整然と連なっているのが見えた。駄菓子屋も発見。その2~3件向こうには、パーマ屋らしき看板。本を売っている店先も遠くに見える。心が浮き立った。そして、その奥から、小さな不安も浮き上がってきた。‥‥今回の転校は、油断ならないかもしれない‥‥。

登校初日。しかし僕の不安は、朝のうちに弾けるように消えた。近所に多い同級生たちをそこはかとなくまとめているように見える一人の少年が、人見知りの僕を仲間にいざない、気を配りつつ、学校までまるで引率するかのように、連れて行ってくれたからだ。“昭和のガキ大将”、米屋のテッチャンだった。豊田小学校までは、普通に歩けば約15分。それを遊びながら二倍くらいの時間をかけて行った。校門を入ると、左手に講堂(兼体育館)、正面に平屋の校舎、右手に少し新しい二階建ての校舎が建っていた。6年生の二クラスは、その二階に並んでいた。一階の二クラスは五年生だったと思う。

数人で登校してきた僕は職員室に行き、先生と一緒に教室に向かった。転校生のルールには、もう慣れている。教室に入ると、すぐに紹介される。名前だけを名乗り、挨拶をして、先生の指し示す席に好奇の視線を浴びながら移動し、そこにランドセルを置き、顔を上げると顔の反転が遅れたあるいは遅らせた2~3人と視線がぶつかる。かなり、危険な一瞬だ。さりげなく目を逸らし‥‥、と思ったら、勝手が違った。

まったく前が見えないのだ。目の前にあるのは、大きな学生服の壁‥‥。それが、同級生の背中だと理解するのには、数秒を要した。その壁、いや背中は、やや緊張しているように感じた。僕は、「せんせ~い。せんせ~い!」と、身体を大きく左右に倒しながら、手を上げた。「おう!誰だ?どこだ?」と返事は聞こえるが、姿が見えない。思いっきり身体を倒し、やっと見つけてもらった。

「そうか~。三浦の後ろじゃあ、前が見えんわのお」と、先生は笑い、多くの視線が集まった後、女の子たちの抑えた笑い声が響いた。

その頃、僕は身長130cm台。三浦君は、島根県の健康優良児として表彰された子だと、その日のお昼休みに聞いた。170cm。60㎏台だった。

席を替えてもらえたのは言うまでもない。ただ、なぜかちょっぴり残念だった。

三浦君とは、いい友達になった。

60sFACTORYプロデューサーKakky(柿本)

60sFACTORY活動日記は、こちら。

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