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60年代、田舎の中学校でのできごとー①

島根県の中学校で、60年代に起きた(起こした)小さな事件の数々‥‥。

偽デモ事件

安保闘争が新聞紙面をにぎわし、東大生樺美智子さんの死亡が衝撃的だった昭和35年(1960年)、僕は初めて丸刈りになり、田舎の小学生になりきった。浜田市の飲食店街生まれの“似非町っ子”は消えたのだった。そして、遊び友達のグループにも無事入ることができてから迎えた中学校生活。浮き立つ気持ちが、たくさんの小さないたずらを生んだ。

夏休みが終わって間もない頃だったと思う(この頃は、背が先に伸びていた同級生の女子に、「洋ちゃん、静かにしなさい」と頭を撫でられたりしていた)。放課後の掃除の時間は、一方では遊び時間。当番だった僕が、「デモやろうか~」と言い出した。「デモって、なんじゃ?」「やり方あるんじゃろう?」などとざわつくのを、「並んで、同じこと言うて歩けばええんじゃあや」と抑えて、先頭に立った。しかし、形にもならなければ、何を言っていいかわからない。で、僕はブリキ製のチリトリを目の前に掲げて、ハタキで叩きながら歩き始めた。なんだか違うなあ、とは思った。縦ではなく横に並んだ方がいいのかなあ、とも思った。ま、いいか、と歩き始めた。何かに反対し、何かに賛成しなくてはならない、と思い立った。

「勉強反対!弁当賛成!」。一声上げてみると、語呂がよくて気持ちいい。ガシャガシャとチリトリを叩きながら、行進を始めた。「勉強反対!弁当賛成!」と声に出していると、すぐに10人近い人数の列になった。みんな、思いは一緒だ~と思うと、勢いがついた。ついに、偽デモの列は、教室を出て廊下をじぐざぐに練り歩き始めた。すると間もなく職員室のドアが開いた。僕たちの教室の隣が職員室だというのを、僕は首をすくめるように思い出した。

「何を馬鹿なことやっとるんじゃ~。お前か、張本人は。こっち来い!」。耳を引っ張られて職員室に連れて行かれた。「中学生にもなって何やっとるんじゃ、お前は。掃除はちゃんとしたのか?」。頭を掻いていると、親父と目が合った。「お前、テレビは好きか。よく観とるか?」。親父の目線が気になりながら答えた「はい!」。「何観とる」。「NHKの教育テレビ!」「嘘つけ!ほんとは~!?」「チロリン村とクルミの木!」「馬鹿か、お前」。目の片隅で、親父が机に突っ伏すのが見えた。同じ中学じゃ、親父苦労するなあ、と思った。

後年、学生運動やデモに参加することがなかったこととこの事件は関係ない。

60sFACTORYプロデューサーKAKKY(柿本)

60sFACTORY活動日記は、こちら。

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