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本物のガキ大将と男の子の世界

1960年春から通い始めた島根県益田市立豊田小学校は、田圃の中に突然作られた小学校のようだった。典型的な木造校舎。校門を抜け校庭に入ると、正面に本校舎、右に二階建ての新校舎(団塊の子どもたちのためにできたのだろう)、左に講堂とコの字に囲まれる。周囲が田園地帯、校門前が未舗装の国道と開けているせいか、のどかで明るい雰囲気の、学校らしい学校に思えた。わずか一年しか過ごせないのが悔しく思えるほどだった。同級生たちも、豊かな田園地帯の子どもらしく明るくおおらかで、屈託なく僕を溶け込ませてくれそうだった。新校舎の二階上がってすぐの6年1組(1学年2クラス)で、新学期が始まった日、僕は転校生として紹介された。

教壇で簡単な挨拶をして顔を上げると、正面に大人のような子どもの姿が見えた。後でわかったことだが、島根県の健康優良児として表彰されたという三浦君だった。僕の記憶では、170cm近くは既にあったはずだ。丸いほっぺに人のよさそうな笑みを浮かべながら、その大人子ども三浦君は、僕を見ていた。僕は、その視線を避けた。先生が突然、「君の席は、一番後ろだからね」と言った。「はい」と、席を探す風情で教壇を降りた。席に着くまでが、いつも一番気恥ずかしい。空いてる蓋付きの机に着き、蓋を開けてランドセルの中身を片付け、目を上げた。前が見えない。巨大な背中があるだけだ。そう、一列間違えて、僕の机は、三浦君の後ろにセットされていたのだ。「先生~~」。身体をほとんど真横に倒し、精一杯手を伸ばした。教科書に目を落としていた教師は、「なんだ~~?」と訝しげな声で目を上げ、三浦君の陰から少しだけ見えている僕を見つけて大きく笑った。「そりゃ大変じゃ。前が見えんわのお」。教室中が振り向いた。みんな笑った。僕は、三浦君の背中に避難した。「ここも悪くないなあ」と思った。席は真ん中より前に急遽変更され、ざわざわと小さな席替え騒ぎになった。当時130cm台の身長の僕は、こうして受け入れられた。

それまでに経験したことのなかった「男の子の世界」が、それから始まった。本物のガキ大将がいた。

60sFACTORYプロデューサーKAKKY(柿本)

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