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米屋のテッチャンー②

いじめっ子は、本来小悪人である。小さな優越感やささやかに優位性を得ることができる居場所を求めて、明らかに勝てる相手を選び、長くいたぶる。いたぶっている間だけ保持できるはかない優越感だけに執拗だ。いつの時代にも、どんな社会、会社にも小悪人はいる。小悪人は、力のある者にまず擦り寄り、弱者のいじめが許容される、あるいは正当化される環境を手に入れておこうとする。そして、じっくりと獲物を見つけいたぶり始める。小悪人の“小”たる所以である。

しかし、本物のガキ大将、人を束ねる力を持った男は、小悪人の擦り寄りには超然として無関心だ。むしろ、小悪人の擦り寄りは弱者を苛めようとする前兆だと察知し、小悪人の言動にさりげない注意を払い始める。なぜなら、本物のガキ大将は、弱者のためにこそ存在しているからだ。

転校して間もない初夏の頃、僕は本物のガキ大将を初めて見た。

S君という、少し意地悪な子がいた。S君は、言葉やちょっとした暴力を使って、ターゲットにしている数人の子どもたちに小さな屈辱感や、不愉快を与えてほくそえんでいた。僕も危うくターゲットにされるところだったが、1~2度の接近遭遇を何とか過不足なく切り抜けて、ターゲット候補から除外された。いつも狙われているのが、T君だった。学業が思わしくなく、身体も僕くらいの小ささ、意思表示も明快ではないことが、T君を狙いやすい存在にしていた。ただ、いじめの実行者はS君のみ。意地悪な子どもたちが複数になることはなかった。しかし、誰もS君のいじめからT君を本格的に救出することもなかった。次のターゲットにされることが怖いからだった。

そんなある晴れたお昼休み。新校舎二階のクラスでお弁当を食べ終わってわいわいと遊んでいた時のことだった。窓から校庭を一瞥したテッチャンが、突然駆け出した。僕は唖然として見送り、何事が起きたのかと、校庭の方を見た。まず目に入ったのは、1階から裸足のまま駆け出していくテッチャンだった。猛然と走っている。僕はその行き先を目で追った。校庭の向こうの端、小さく二人の男の子の姿があった。S君とT君だった。T君は、暴力を受けているようだった。うなだれていた。テッチャンが猛スピードで近づいた。あと少し。そう思うまもなく、テッチャンはジャンプした。左拳をふりかざして。次の瞬間、S君は倒れていた。すぐにS君は右頬に手を当てながら立ち上がった。その時、テッチャンはもう校舎の方に向かって歩み始めていた。

本物のガキ大将の姿だった。‥‥‥。その後、テッチャンは、そのことを語ることもなかった。S君の意地悪はピタリと止んだ。

60sFACTORYプロデューサーKAKKY(柿本)

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