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井戸水になりたい!-②

「何になりたい?」。友人や大人たちに、時々問いかけられた。小学校低学年の時は、たまに土埃を巻き上げながら県道を走り抜けていくバスの運転手の窓越しの寡黙な姿に憧れて、「バスの運転手」と答えた。中学生になり、テレビドラマを観るようになると、「弁護士になる」と言い始めた。「ペリー・メイスン」の影響だった。高校受験の直前には、「大工になる」と言い張って受験拒否の姿勢を示し、親父に殴られた。微分だ積分だって習うらしいが、親父は社会に出て使ったことがあるか?と斜に構えて問いかけ、いいや!との返答を聞いて、使いもしないことを習うより家を建てられる方がいいじゃない、と親をなめた直後、左頬を殴られて少しよろけた。そんなに思い込んでいたわけでもないから、それで終わった。

大学受験の前年、高校3年生の夏、親父が突然の椎間板ヘルニアの発症に、帰路の中途、橋の上でバナナの皮を踏んだようにすっ転び、這って帰って来てからは、「医者になる」と言い始めた。いい加減なものだ。そして、職業に強い憧れや思い入れを抱いたことがないまま、大学生になった。そんな時の隣席に座った同級生からの、不意を突くような質問である。「お前、何になりたいんや?」。職業など浮かんでくるわけがなかった。

「井戸水」と答えると、「なんやねん、それ」と、顔を覗き込まれた。「井戸水って、夏は西瓜が冷やせるくらい冷たいのに、冬は暖かいやん」。「で?」。「変わるのは外界の温度。実は、井戸水は変わってない」。「‥‥。変わりたくないっちゅうことか」。

ということだったのだが、口に出してみると、それこそ「なりたかった姿」のように思えてきたのだった。

変わるまい、と依怙地になるわけではない。静かに自然体でいながら、外界には惑わされない。ということである。

Be Trad!

60sFACTORYプロデューサーKAKKY(柿本)

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