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VANのスピリット

一昨日(水)、石津事務所で打ち合わせ。まずは、都内の百貨店のGW企画に関して。とある百貨店の販促の方から、「団塊世代を中心とした人たちに来ていただけるイベント」をやりたい、と目的・場所・期間等々の説明を受ける。同様の企画で、過去実施をお手伝いした例をいくつか、そのポイントや注意すべき点などを中心にお話し、今回の方向性をざっくりと口頭でご提案した。不安があるとすれば、昨今の団塊世代ターゲットの企画に共通して存在する問題点。すなわち、担当の方の若さだと感じたが、熱意で克服されることだろう。

団塊世代は、「共感世代」でもある。モノに対するこだわりや本物志向も、モノをモノとしてだけ捉えているわけではない。モノの向こうにある歴史や人の技に触れ、そこに生まれる共感を大切にしているのである。イベントにしてもしかり!送り手の側の知識、思いがそこに感じられることが、イベントを魅力あるものにできるかどうかの分かれ目となるのである。これは本来、世代に関係なく、感動をプロデュースする際の極めて重要なポイントだが、団塊世代がターゲットとなると、「懐かしの」「思い出の」といった言葉が冠に付くことが多くなるために、置き去りにされやすいこととなる。「懐かしのモノ」「思い出のコト」を並べれば喜んでもらえる、と思われがちなのだ。それは、違う!「共感」とは、ニュアンスの中に生まれてくるもの。そして、ニュアンスとは、モノやコトをプロデュースする側の知識と思いが注入されてこそ、生まれてくるものなのだ。

百貨店のGWイベントの打ち合わせが終了して、石津祥介さんと「石津記念館」の話に移行する。石津謙介さんの大量の遺品の中からどんなモノを、どう並べるか、ということより、まずは運営ソフト、特に記念館をコアとした“ささやかなビジネス”をどう組み立てるかが大切と、僕の考えを改めて力説。誰かやどこかの会社に記念館が委ねられていくことは、避けたい。石津記念館は、堂々と“自立”していなくてはならない。メンズファッションやライフスタイルや生活文化に小さな貢献をしながら。それをささやかなビジネスとして成立させながら。時代に風を送り、時代の風を呼び込む場所になっていかないと記念館は枯れてしまう。それは、石津謙介に失礼だ。僕は、真剣にそう思っている。「アイビーのメッカ(日本のメンズファッションのメッカ)」には、それだけの価値と役割があるはずだ。方法論は、ある!石津謙介さんの哲学、生き方と切っても切り離すことのできないVANのスピリットは、象徴する場所を得なければ、消えてしまう危険性があるのだ。

伝統ある確かなものへの敬意は、忘れない。似非や誤魔化しは笑ってやろう。権威は、それが値するもの以外は、信用しない。批評精神を忘れず、どんなものでもやがて陳腐化していくのだ、ということをしっかりと意識し、常に好奇心を持って見つめ、触り続けていかなくてはいけない。伝統も、そうして、しなやかな好奇心に支えられて築かれていったのだ。

型を大切にし、型にはまらない。

石津謙介さんは、ずっと、そう語っているかのような生き方だったと、僕は思う。そして、そんな生き方が、僕は好きだ。

                 60s FACTORYプロデューサー  柿本洋一

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コメント

柿本さん、こんばんは。いつも楽しく拝見させていただいておりま

す!石津謙介先生の記念館の事で1つ案があり、メールを打た

せていただきました。その案とは

石津謙介先生の四谷のご自宅(IVY ハウス)が保存されている

のでしたら、メモリアルルームとして活用すると言う事です。


希望者を募って抽選を行い

見学会のような形で年に数回公開される機会を作り

季節ごとに先生の遺品を展示してはどうかと思います。

宜しくお願い致します。

投稿: 原 あきひろ | 2007年3月17日 (土) 23時24分

VANと言えば石津健介、
岡山県岡山市出身のファッションデザイナー。日本メンズファッション協会最高顧問。ファッションのみならず、音楽、ライフスタイル、思想に至るまで、日本の戦後文化に大きな影響を残した人物。彼は岡山市舟着町(現 天瀬町南)で子供のころ過ごしています。 こんな偉業を残した人を岡山は忘れ去ってしまっています。岡山は文化に弱いまちですね。石津健介 戦後の岡山の誇りたい人物の筆頭ではないでしょうか。市民として彼を讃えてあげたいです。私は時々天瀬に行き彼の住まった土地の前に立ち、感慨にふけります。でもここに彼の足跡を示すものは見えません。倉敷での記念館構想も消滅しています。

投稿: 松下邦夫 | 2015年2月21日 (土) 10時03分

松下邦夫さん

まったくそのとりだと思います。石津謙介記念館をアイビーの殿堂あるいは色褪せさせてはいけない日本の戦後ファッションの歴史館として残し、メンズファッションの基本を求め知りたい人たちが“Back to Basic”の必要性を感じた時、いつでも訪ねて行ける場所にすべきだ、と考え、そんなプランをクラボーさんに提案したのですが……。
過去のノウハウの集積があれば、そこから新たな未来の発信もできるかと……。岡山と倉敷には、ファッション関連の地場産業もあるわけですしね。
理解していただけませんでした。どうも、現状維持に汲々としている人ばかりだったように記憶しています。とても残念でした。
石津事務所の協力体制もできていたんですけど、地元の熱意なくしては無理な話だったんでしょうね。

投稿: Kakky | 2015年2月23日 (月) 19時53分

原あきひろさん

石津さんのご自宅は、奥様が亡くなられた後、息子さんたちがどのように管理なさっているのか、今はわかりません。石津祥介、祐介兄弟に、機会があれば聞いてみます。
おそらく、ご提案の類の話は過去もありましたし、その時に動きがなかったということは、実現性は極めて低いのではないでしょうか…。

石津さんの大量の遺品や残された資料の行く末が、僕は気がかりです。貸倉庫に保管されているはずなんですが……。

投稿: Kakky | 2015年2月23日 (月) 20時03分

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